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じゅうはちじのおんがくよく

十八時の音楽浴

海野 十三

線上閱讀海野 十三《十八時の音楽浴(じゅうはちじのおんがくよく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 103,941 字 · 210 頁

青空文庫

「もう誰も室内にはおりませぬが、ご用の筋はどんなことですか」

「ああ、ソノほかでもないが、博士には敬意を表したい。博士の音楽浴の偉力によって、当国は完全に治まっている。音楽浴を終ると、誰も彼も生れかわったようになる。誰も彼も、同一の国家観念に燃え、同一の熱心さで職務にはげむようになる。彼等はすべて余の思いどおりになる。まるで器械人間と同じことだ。兇悪なる危険人物も、三十分の音楽浴で模範的人物と化す。彼等は誰も皆、申し分のない健康をもっている。こんな立派な住民を持つようになったのも博士のおかげだ。深く敬意を表する。……」

「閣下、どうかご用をハッキリ仰せ下さい」

「ウム」と髭がゆらいだ。「では言うが、君が目下研究中の人造人間のことだが、あれはもう研究をうちきったほうがよくはないかと思うのだ」

「人造人間の研究をうちきれとおっしゃるのですか。それはまた何故です」

「というのはつまり、十八時の音楽浴でもって、住民はすべて鉄のような思想と鉄のような健康とを持つようになったではないか。彼等は皆、理想的な人間だ。しからばこの上に、なお人造人間を作る必要があろうか。人造人間の研究費は国帑の二分の一にのぼっている。