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せんねんのじさ

千年の時差

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《千年の時差(せんねんのじさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,756 字 · 10 頁

青空文庫

どうせ原著は読めないのであるから、専門の学者たちの解説か、随筆くらいを通じて、いろいろと自己流の夢を描いてみて、それで結構満足している。一番いいのは、遺物の写真や、発掘品の絵の原色版をながめることである。紀元二千六百年記念に、審美書院から出された『西域画聚成』など、こういう目的には、まことによく適ったものである。トルキスタンの死の荒野に、千年以上も埋れていた絵が、まるで昨日描かれたように、鮮かな色彩をのこしている。降魔図の中などに出てくる、もろもろの妖怪変化にも、何か生命があるような気がする。少なくもこれを描いた人々の頭の中では、こういう姿のものが実在していたのであろう。

そういう時代の人間を、その生きた姿で描いたような小説があれば、それが一番読みたいのであるが、滅多にそんなものには出遭わない。この頃大分評判になった『エジプト人』なども早速読んでみたが、ちっとも面白くなかった。もっともエジプト学の現在の知識を紹介するという意味では、いろいろ詳しい記述があるので、読んで損をしたとは思わないが、小説としては、ひどく低級なものであった。それでなければ、世界中に何十万部と売れるはずもない。