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せんねんのじさ
千年の時差
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《千年の時差(せんねんのじさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,756 字 · 10 頁
人間のものの考え方はもちろんのこと、感じ方さえも、時代と環境とによって、ずいぶんひどくちがうものだということを、この頃しみじみと感ずるようになった。いわばこの齢になって、やっとものごころがついたわけである。
コペルニクス以前の人間のものの考え方は、現代人には、到底理解されないという意味の、有名な言葉があるそうである。こんなことをいい出すのは、実は大分以前から、妙な道楽が一つあるからである。それは柄にもない話であるが、古代文化に関する雑書の濫読という道楽である。弟が考古学をやっていたので、その影響を受けたのかもしれないし、或いは兄弟ともに、何かそういう血筋をひいているのかもしれない。
われわれの遠い祖先は、今日とは質的に乖離した文化の中で、現代人からは全くかけ離れた意識をもって生きていた。そういう遙かなる悠久の昔の夢を心に描いてみることは、何という理由なしに、ただたのしいものである。それは日本だけに限った話ではない。殷墟の甲骨文字の研究も、シェバの女王の生い立ちを伝える楔形文字の土板も、『暁の女王と幻の王の物語』も、ただその題目を見るだけで、もう充分たのしいのである。