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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
其林の句は物を拭うべき紙を袖にしている、というだけではない。実際何かを拭う必要があって、袂の紙を取出した場合である。これほどのものならば更衣の感じを妨げぬのみならず、ただ袂に何もないというよりも複雑な場合を現している。元禄の句を単純だとのみ片づけることは、当っていないのである。
卯の花やせきだ干置ク里の垣 左白
「せきだ」は雪踏のことである。『言海』には雪踏の訛としてある。卯の花の咲いている里の垣根に雪踏が干してある、というだけのことに過ぎぬが、これは考えて後にはじめて得る配合ではない。眼前の実景である。工夫に成る配合は所詮自然の配合に如かぬ。この句が一見平凡なようで、しかも棄てがたいのは全くそのためであろう。
卯の花に誰が櫛けづる髪の落 桃※
これも実景に相違ない。卯の花の咲いているほとりに、誰が梳ったものか、髪の毛が落ちている、という趣である。
卯の花は必ずしも妖気を伴う花とも考えられぬが、白いこまかい花でもあり、陰鬱な季節の連想もあり、何となく寂しい感じがする。そこに「誰が櫛けづる髪の落」などという趣と一脈相通ずるものがある。この句は卯の花の凄じいというか、無気味というか、そういう方の感じを発揮したものである。