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こくをみる

古句を観る

柴田 宵曲

線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁

青空文庫

時明りというやつで、今にも晴れそうな気配を見せることがある。夕方などは殊に天末が明るくなって、雲の間から夕日の光がほのめいたりする。しかしそのまま日が暮れると、相変らずの五月雨になるのである。

沼波瓊音氏の句であったか、「入日雲見えしもしばし皐月雨」というのがあったと記憶する。晴れそうになって晴れぬ状態は、この「しばし」といい「しばらく」という語に尽きるように思う。真の梅雨晴でないこともまたこの語がよく現している。こういう自然の現象には、古今の相違があるべくもない。

卯の花やむかひから来る火のあかり    林紅

この卯の花は路傍にでも咲いているのであろう。卯の花の白々と目立つ闇の道を、向うから誰か来る灯が見える、というだけのことらしい。

もしこの「むかひ」が向い家の略で、今いう「おむこう」などというのに当るとなると、前の解釈は全然違って来る。庭の垣根か何かに卯の花があって、それに向い家の灯がさすものとすれば、それもまた一の趣たるを失わぬけれども、この場合の「来る」という語には、どうしても或動きがある。ただ灯がさすものとは受取れない。

尤も前の解釈にしても、単に灯が向うから来るだけでなしに、その灯の明りが卯の花にさすことを認むべきであろう。