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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
旅宿の茄子汁を一口啜って、眉を顰めているような様子まで連想される。
蝙蝠や日は今入て雲の紅 一彳
赫々たる太陽が漸く西に沈んで、雲は一面紅になっている。日はもう落ちたが、全く暮れるにはまだ間がある。そういう空を蝙蝠が翩々として飛びつつある、という句である。
近頃では夕焼というものを夏の季題にしているが、炎威が烈しいだけあって、夏の夕焼が最もめざましいように思われる。佐藤春夫氏も『田園の憂鬱』の中に、夏から秋への夕焼の推移を述べて、「空の夕焼が毎日つづいた。けれどもそれはつい二、三週間前までのような灼け爛れた真赤な空ではなかった。底には深く快活な黄色を匿してうわべだけが紅であった。明日の暑さで威嚇する夕焼ではなく、明日の快晴を約束する夕栄であった」とあるのが、その間の消息をよく伝えている。炎暑に喘ぐ人は秋の到ることをよろこぶにしても、夕焼本位に見れば、明日の暑さで威嚇する時期が全盛の名に値するのであろう。
蝙蝠は昼と夜との境目を自分の舞台として頻に飛廻るが、われわれの受ける感じは、いずれかというと幽暗な方に傾いている。この句はそういう感じに捉われず、夕焼雲だけを配したところが面白い。