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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
(『五人女』)などと使っている。更に後世になっても「あやしさの私雨や初紅葉」という嘯山の句、「箱根山関もる人も朝ぎりのわたくし雨にあざむかれつゝ」という景樹の歌など、これを踏襲したものがある。そこばかり降るのを「私雨」と称するのは、誰の創意に成る言葉か知らぬが、含蓄があって面白い。
已に私雨という言葉が通用する以上、私風もあって差支なさそうである。外は風が吹くとも見えぬのに、ここの谷間だけ風が吹いて、谷田の鳴子がガラガラ鳴る。「私風」という言葉には、妖気というほどではないけれども、多少怪しい感じが伴っているような気がする。
私雨という言葉から出発して、新に私風という言葉を造ったのか、地方的にこういう言葉があったものか、その辺の穿鑿は不案内である。いずれにしてもこの語を用いずに、これだけの感じを現すことは困難であろう。
月うすし河獺や取ル鮭の魚 蘆錆
薄月夜である。はっきりとも見えぬ水の隈に、何やらざぶんという物音がする。獺が鮭でも取るのであろう、という句意らしい。
獺が魚を取るのに不思議はないといえばそれまでのようであるが、この句は慥に妖気を含んでいる。