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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
燭を秉るということは、近頃は停電でもないとあまり見られなくなった。人気のない玄関のようなところでも、スウィッチを一つ捻りさえすれば、直に皎々たる電燈の世界になるのだから、便利になったには相違ないが、それだけ趣を失ったともいえるであろう。ラムプを持って玄関まで送り出たり、マッチを擦って穿くべき下駄を検したりしたのは、ついこの間のように思うけれども、どうやら過去の風俗誌中のものになりかけてしまった。
この句は燭を秉って客を送り出た場合である。定らぬ燭の灯に、送る主の影も、送られる客の影もゆらぐ。そういう夜気の中に漂う梅が香を感ずるのは、電燈世界にはあるまじきほのかな趣である。
梅が香なるものは歌よみがいうほど強い匂ではない、代々の歌人がよんだ梅が香の量は大変なものだから、それを香水の料にでも用いるのは格別、歌の材料としては今後見合せたらどうだ、といって嗤ったのは子規居士であった。俳句に用いられた梅が香を見ても、単に梅というのと変らぬようなのもあるが、香に即したものは動もすると利き過ぎる弊に陥る。この句の如きは不即不離の間において、よく梅が香の趣を発揮し得たものというべきであろう。