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こどものかなしみ

号外・少年の悲哀 他六篇

国木田 独歩

線上閱讀国木田 独歩《号外・少年の悲哀 他六篇(こどものかなしみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,584 字 · 59 頁

青空文庫

「徳、もう帰ろう」と言うや、女は急に頭を上げて、

「ごめんなさいよ、ほんとに坊様は、わたしの泣くのを見ていてもつまりません。……わたし、坊様が来てくださったので弟に会ったような気がいたしました。坊様もお達者で、早く大きくなって偉いかたになるのですよ」とおろおろ声で言って「徳さんほんとにあまりおそくなるとお宅に悪いから、早く坊様を連れてお帰りよ、わたしは今泣いたので、きのうからくさくさしていた胸がすいたようだ。」

※(アステリズム、1-12-94)

女は僕らの舟を送って三四丁も来たが、徳二郎にしかられてこぐ手を止めた、そのうちに二艘の小舟はだんだん遠ざかった。舟の別れんとする時、女は僕に向かっていつまでも、

「わたしの事を忘れんでいてくださいましナ」とくり返して言った。

その後十七年の今日まで、僕はこの夜の光景をはっきりと覚えていて、忘れようとしても忘るることができないのである。今もなお、哀れな女の顔が目のさきにちらつく。そしてその夜、うすいかすみのように僕の心を包んだ一片の哀情は、年とともに濃くなって、今はただその時の僕の心持ちを思い起こしてさえ堪えがたい、深い、静かな、やる瀬のない悲哀を覚えるのである。