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こどものかなしみ

号外・少年の悲哀 他六篇

国木田 独歩

線上閱讀国木田 独歩《号外・少年の悲哀 他六篇(こどものかなしみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,584 字 · 59 頁

青空文庫

第一に感じたのは、六蔵に数の観念が欠けていることです。一から十までの数がどうしても読めません。幾度もくり返して教えれば、二、三と十まで口で読み上げるだけのことはしますが、道ばたの石ころを拾うて三つ並べて、いくつだとききますと、考えてばかりいて返事をしないのです。無理にきくと初めは例の怪しげな笑い方をしていますが、後には泣きだしそうになるのです。

私も苦心に苦心を積み、根気よく努めていました。ある時は八幡宮の石段を数えて登り、一、二、三と進んで七つと止まり、七つだよと言い聞かして、さて今の石段はいくつだとききますと、大きな声で十と答える始末です。松の並木を数えても、菓子をほうびにその数を教えても、結果は同じことです。一、二、三という言葉と、その言葉が示す数の観念とは、この子供の頭になんの関係をも持っていないのです。

白痴に数の観念の欠けていることは聞いてはいましたが、これほどまでとは思いもよらず、私もある時は泣きたいほどに思い、子供の顔を見つめたまま、涙がひとりでに落ちたこともありました。

しかるに六蔵はなかなかの腕白者で、いたずらをするときはずいぶん人を驚かすことがあるのです。