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こどものかなしみ
号外・少年の悲哀 他六篇
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《号外・少年の悲哀 他六篇(こどものかなしみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,584 字 · 59 頁
と徳二郎は女に言って、さらに僕のほうを顧み、
「坊様を連れて来たよ」と言い足した。
「坊様、お上がんなさいナ。早くお前さんも上がってください、ここでぐずぐずしているといけないから」と女は徳二郎を促したので、徳二郎は早くも梯子段を登りはじめ、
「坊様、暗うございますよ」と言ったぎり、女とともに登ってしまったから僕もしかたなしにそのあとについて暗い、狭い、急な梯子段を登った。
なんぞ知らん、この家は青楼の一で、今女に導かれてはいった座敷は海に臨んだ一間、欄によれば港内はもちろん入り江の奥、野の末、さては西なる海の果てまでも見渡されるのである。しかし座敷は六畳敷の、畳も古び、見るからしてあまり立派な室ではなかった。
「坊様、さアここへいらっしゃい」と女は言って、座ぶとんをてすりのもとに運び、夏だいだいそのほかのくだもの菓子などを僕にすすめた。そして次の間をあけると酒肴の用意がしてある。それを運びこんで女と徳二郎はさし向かいにすわった。
徳二郎はふだんにないむずかしい顔をしていたが、女のさす杯を受けて一息にのみ干し、
「いよいよ何日と決まった?」と女の顔をじっと見ながらたずねた。