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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《唄立山心中一曲(うたのたてやましんじゅういっきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,835 字 · 61 頁

青空文庫

が凝視める瞳で、やっと少しずつ、四辺の黒白が分った時、私はフト思いがけない珍らしいものを視た。

二

框の柱、天秤棒を立掛けて、鍋釜の鋳掛の荷が置いてある――亭主が担ぐか、場合に依ってはこうした徒の小宿でもするか、鋳掛屋の居るに不思議はない。が、珍らしいと思ったのは、薄汚れた鬱金木綿の袋に包んで、その荷に一挺、紛うべくもない、三味線を結え添えた事である。

話に聞いた――谷を深く、麓を狭く、山の奥へ入った村里を廻る遍路のような渠等には、小唄浄瑠璃に心得のあるのが少くない。行く先々の庄屋のもの置、村はずれの辻堂などを仮の住居として、昼は村の註文を集めて仕事をする、傍ら夜は村里の人々に時々の流行唄、浪花節などをも唄って聞かせる。聞く方では、祝儀のかわりに、なくても我慢の出来る、片手とれた鍋の鋳掛も誂えるといった寸法。小児に飴菓子を売って一手踊ったり、唄ったり、と同じ格で、ものは違っても家業の愛想――盛場の吉原にさえ、茶屋小屋のおかっぱお莨盆に飴を売って、爺やあっち、婆やこっち、おんじゃらこっちりこ、ぱあぱあと、鳴物入で鮹とおかめの小人形を踊らせた、おん爺があったとか。