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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《問はずがたり・吾妻橋 他十六篇(あづまばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 頁
た。日本刀を以て外客を道に斬った浪士の心は言うまでもなく壮となすべきであろう。しかし、それと共に、老母を国に残して来た遠客の死は、更に遥に悲壮であり、また偉大であると言わねばなるまい。
わたくしは慶応義塾の教壇を退いてから、久しく広尾のあたりを通る機会がなかった。四谷塩町から青山霞町を過ぎて広尾に至る市内電車の初て開通したのは久しからざる以前の事で、その時分笄橋から、広尾の麓を過ぎて三ノ橋に至る小流の岸にはむかしながらの郊外らしい田園の風趣が残っていた。電車の屋根は沿道の樹木の垂れさがる枝に触れぬばかり。流の水の堰にせかれて瀑となるあたりには、水車がゆるやかに回っていた。
しかし震災後に至って電車は広尾の曲り角から、その支線を豊沢から恵比須の方へと延長させるようになって、水車の回っていたあたりは、市中のいずこにも見られるような乗換場の雑沓を呈する処と化した。
光林寺の門前には赤羽橋の方へ行く電車の停留場がある。門前の道路には松の老樹が両側からその枝を交えていたことを覚えているが、幾年の後重ねて来て見ると、松は大方伐り去られながら、それでもどうやら往時を思い起させるだけの一、二本を残していた。