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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《問はずがたり・吾妻橋 他十六篇(あづまばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 頁
戦争中その上巻の公表よりして今日に至るまでの歳月を数えても既に五年を閲している。
細雪の作風は純然としてまた整然として客観的の範囲を厳守している。明治以来わが現代の小説中、その作風のかくの如く整然として客観的なるものは未だ曽て見られなかった。田山花袋一派の作者が一時小説に客観的作風の重んずべきを説いたことがあったが、その作例には却ってこれが証となすべきものを示すことが出来なかった。その傑作と称せられる「蒲団」の如きも、今日よりこれを観れば純然たる客観的作品となすには作者の態度において欠くるところが尠くなかった。これに反して、「細雪」は余の見るところその客観的なることは蓋しフローベルの「ボワリイ夫人」、また「感情教育」の二大作に比するも遜色なきものであろう。
元来客観を主とした長篇小説は布局に変化が少いので、動もすれば読者を倦ましめ易い。これを救うものは深刻なる心理描写を試むるに、洗練の極地に達した文辞の妙を以てするより外に手段がない。非凡なる文章家にあらざる限り、客観的長篇の小説は作り得られるものでない。二葉亭鴎外二家の著作は能くこれを証明している。