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ぜんのけんきゅう

善の研究

西田 幾多郎

線上閱讀西田 幾多郎《善の研究(ぜんのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 頁

青空文庫

我々の精神もその低き程度においては動物の精神と同じく単に本能活動である。即ち目前の対象に対して衝動的に働くので、全く肉欲に由りて動かされるのである。しかし意識現象はいかに単純であっても必ず観念の要求を具えて居る。それで意識活動がいかに本能的といっても、その背後に観念活動が潜んで居らねばならぬ(動物でも高等なる者は必ずそうであろうと思う)。いかなる人間でも白痴の如き者にあらざる以上は、決して純粋に肉体的欲望を以て満足する者ではない、必ずその心の底には観念的欲望が働いている。即ちいかなる人も何らかの理想を抱いて居る。守銭奴の利を貪るのも一種の理想より来るのである。つまり人間は肉体の上において生存しているのではなく、観念の上において生命を有して居るのである。ゲーテの菫という詩に、野の菫が少き牧女に踏まれながら愛の満足を得たというようなことがある。これが凡ての人間の真情であると思う。そこで観念活動というのは精神の根本的作用であって、我々の意識はこれに由りて支配せらるべき者である。即ちこれより起る要求を満足するのが我々の真の善であるといわねばならぬ。然らば更に一歩を進んで、観念活動の根本的法則とは如何なる者であるかといえば、即ち理性の法則ということとなる。