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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《四つの都(よっつのみやこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 頁

青空文庫

六 名曲堂の奥座敷。

七 汽車の中。

葉子(指して)「あんた」

十吉(平気な顔をして)「文久三年に品川沖でアンタという名の鯨がとれた事がある、こんな髭を生やしとった」(と鼻の下を指す)

葉子「嘘ばっかし」

奥へ去る。

鶴三「鯨といえば、わたしが欧洲航路の船乗りをしていた時に印度洋で……」

十吉「あんたは、船の話しかしないんだね、昔の夢だよ」

鶴三(レコードを外してブラシを掛けながら奥へ声をかける)「新坊、銭湯へ行って来な」

六 名曲堂の奥座敷。

新吉が縁側で小鳥に餌をやっている。

鶴三の声「濡れた儘で居るんじゃねえぞ」

新吉(ぼそんとした声で)「うん」

葉子、着更えを持って新吉の傍へ来る。

葉子「さあ、これを着更え」

新吉(ひとり言のように)「もう明日から餌やられへんな」

葉子「心配せんでも姉ちゃんがやったげる、さあ、はよ着更えんと風邪ひくし」

七 汽車の中。

鶴三「風邪を引くんじゃねえぞ」

と、新吉に言いきかせている。新吉頷く。

鶴三「一日休めば一日増産が遅れる、工場へはいって風邪で休んだといっても父っちゃんはきかねえよ」

風呂敷包から怪しげな薬の袋を取出して来て、

鶴三「お腹が痛くなったらな、この陀羅尼助という薬を服むんだ、一寸苦いがよう効くぞ!」