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よねんかん

四年間

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《四年間(よねんかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,135 字 · 36 頁

青空文庫

ミクロトームというのは材料として取った筋肉などを炭酸粉霧で氷結させるか、酒精をとおして処理し、それを五六ミクロンという薄い切片に切る器械である、馴れてくると興味の多い仕事で、切片つくりはほとんど昌子の専任のようになった。……信三は間もなく戦傷して内地へ帰った、そして広島にある軍の病院にいるという知らせをみて、昌子は兄といっしょに見舞いにゆき、はじめて彼と会った。そのとき彼は昌子の手をびっくりするほど強く握った、

「あなたのことは橋本君から手紙で知らせてもらいました、これからは僕がご面倒をかけるでしょう、どうかよろしく」

ごくあたりまえな挨拶だったが、昌子はふしぎに忘れがたい深い印象を与えられ、激しく彼に惹きつけられるのを感じた。半年ほどして信三は茅ヶ崎へ帰って来た、それからずっと、三人はスクラムを組んだような密接した気持で仕事を続けてきた。体のあまり丈夫でない兄は、五時で住居へひきあげるが、昌子は夕食後も研究所で信三といっしょに働いた。時には夜半をすぎることもあった、そんなとき仕事に区切りをつけて、二人だけで飲む紅茶のどんなに楽しかったことだろう、……仕事着を脱いで書斎のほうへ移ると、信三が菓子(あれば)や果物をとり出し、昌子が湯を沸かし茶をいれる、それから低い肘掛け椅子に深く掛けて、ゆっくりと茶をすすり