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そうせきしとわたし
回想 子規・漱石
高浜 虚子
線上閱讀高浜 虚子《回想 子規・漱石(そうせきしとわたし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 頁
晩飯をすませてから灯火の巷の花見小路を通って二人は都踊に這入った。
都踊の光景は何時来て見ても同じものであった。待合室に待って居る間に、客に連れられた一人の舞子が私に辞儀をした。
「君は舞子を知っているのですか。」と漱石氏は不思議そうに私に訊いた。
「あれは『風流懺法』の中に書いた松勇という舞子です」と私は答えた。松勇らの一群は流るる水のように灯の下を過ぎて何処かに消えてしまった。今演ぜられつつある踊が一段落となって今の見物人が追い出されたために繰込むべく待合わしている此の待合室の客は刻々に人数を増して来た。ガラス張りの戸棚の中には花魁の着る裲襠が電燈の光を浴びて陳列してあった。そのガラスの廻りにへばりついている人には若い京都風の男もあれば妻君を携帯している東京風の男もあった。それらの群集の中に手持不沙汰に突立っている一人の西洋人を見出したときに漱石氏は「あれはウッドでないか。」と口の中で呟くように言った。この待合室に這入った後の漱石氏はまた万屋の閾をまたいだ後の漱石氏と同じようにその顔面の筋肉は異常に緊きしまっているように思われたが、この時私はつかつかとその西洋人の方に進んで行く漱石氏の姿を認めた。