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まど
堀辰雄集 新潮日本文学16
堀 辰雄
線上閱讀堀 辰雄《堀辰雄集 新潮日本文学16(まど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,906 字 · 119 頁
――
そんな二人がその坂の中途まで下りて来て、ふと足を止めて、そういう絵のような空家とその庭とを目に入れたのである。それを見ると、二人は互いに目と目とでこんな会話をしたようだった。「ここなら誰にも見られっこはあるまい」「ええ、私もそう思うの……」
そう決めたのか、二人はその坂の中腹から彼等の脊ぐらいある雑草をかき分けながらその空家の庭へずんずんはいって行った。ちょっと不安そうな眼つきで横文字の書いてある標札をちらりと見ながら。……
その庭園の奥ぶかくには、彼等が名前を知らないような花がどっさり咲いていた。少年はその一つの叢を指しながら、
「やあ、薔薇が咲いていらあ……」と、いくぶん上ずった声で云った。
「あら、あれは薔薇じゃありませんわ」少女の声はまだいくらか少年よりも落着いている。「あれは蛇苺よ。あなたは花さえ見れば何でも薔薇だと思う人ね……」
「そうかなあ……」
少年はすこし不満そうに見える。それから二人は黙ったままその空家のまわりを一巡して見た。窓硝子がところどころ破れている。が、その破れ目から二人がいくら脊伸びをして覗いて見ても、ひっそりと垂れている埃まみれのカアテンにさえぎられて、その中の様子はよく見えなかった。