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ほうおんき

報恩記

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《報恩記(ほうおんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,803 字 · 30 頁

青空文庫

わたしは何もこの家を目当に、うろついていたのではないのですが、ちょうどそこへ来合わせたのを幸い、一稼ぎする気を起しました。その上前にも云った通り、夜は深いし風も出ている、――わたしの商売にとりかかるのには、万事持って来いの寸法です。わたしは路ばたの天水桶の後に、網代の笠や杖を隠した上、たちまち高塀を乗り越えました。

世間の噂を聞いて御覧なさい。阿媽港甚内は、忍術を使う、――誰でも皆そう云っています。しかしあなたは俗人のように、そんな事は本当と思いますまい。わたしは忍術も使わなければ、悪魔も味方にはしていないのです。ただ阿媽港にいた時分、葡萄牙の船の医者に、究理の学問を教わりました。それを実地に役立てさえすれば、大きい錠前をじ切ったり、重い閂を外したりするのは、格別むずかしい事ではありません。(微笑)今までにない盗みの仕方、――それも日本と云う未開の土地は、十字架や鉄砲の渡来と同様、やはり西洋に教わったのです。

わたしは一ときとたたない内に、北条屋の家の中にはいっていました。が、暗い廊下をつき当ると、驚いた事にはこの夜更けにも、まだ火影のさしているばかりか、話し声のする小座敷があります。