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だいどうじしんすけのはんせい
大導寺信輔の半生
線上閱讀芥川 竜之介《大導寺信輔の半生(だいどうじしんすけのはんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,611 字 · 26 頁
――古本屋ばかりごみごみ並んだ二十年前の神保町通りを、その古本屋の屋根の上に日の光を受けた九段坂の斜面を。勿論当時の神保町通りは電車も馬車も通じなかった。彼は――十二歳の小学生は弁当やノオト・ブックを小脇にしたまま、大橋図書館へ通う為に何度もこの通りを往復した。道のりは往復一里半だった。大橋図書館から帝国図書館へ。彼は帝国図書館の与えた第一の感銘をも覚えている。――高い天井に対する恐怖を、大きい窓に対する恐怖を、無数の椅子を埋め尽した無数の人々に対する恐怖を。が、恐怖は幸いにも二三度通ううちに消滅した。彼は忽ち閲覧室に、鉄の階段に、カタロオグの箱に、地下の食堂に親しみ出した。それから大学の図書館や高等学校の図書館へ。彼はそれ等の図書館に何百冊とも知れぬ本を借りた。又それ等の本の中に何十冊とも知れぬ本を愛した。しかし――
しかし彼の愛したのは――殆ど内容の如何を問わずに本そのものを愛したのはやはり彼の買った本だった。信輔は本を買う為めにカフエへも足を入れなかった。が、彼の小遣いは勿論常に不足だった。彼はその為めに一週に三度、親戚の中学生に数学(!)を教えた。