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あにきのようなこころもち
大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ
線上閱讀芥川 竜之介《大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ(あにきのようなこころもち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,007 字 · 56 頁
然れども君の微笑のうちには全生活を感ずることなきにあらず。微苦笑とは久米正雄君の日本語彙に加えたる新熟語なり。久保田君の時に浮ぶる微笑も微苦笑と称するを妨げざるべし。唯僕をして云わしむれば、これを微哀笑と称するの或は適切なるを思わざる能わず。
既にあきらめに住すと云う、積極的に強からざるは弁じるを待たず。然れども又あきらめに住すほど、消極的に強きはあらざるべし。久保田君をして一たびあきらめしめよ。槓でも棒でも動くものにあらず。談笑の間もなお然り。酔うて虎となれば愈然り。久保田君の主人公も、常にこの頑固さ加減を失う能わず。これ又チエホフの主人公と、面目を異にする所以なり。久保田君と君の主人公とは、撓めんと欲すれば撓むることを得れども、折ることは必しも容易ならざるもの、――たとえば、雪に伏せる竹と趣を一にすと云うを得べし。
この強からざるが故に強き特色は、江戸っ児の全面たらざるにもせよ、江戸っ児の全面に近きものの如し。僕は先天的にも後天的にも江戸っ児の資格を失いたる、東京育ちの書生なり。故に久保田君の芸術的並びに道徳的態度を悉理解すること能わず。然れども君の小説戯曲に敬意と愛とを有することは必しも人後に落ちざるべし。