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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

この女の言うことがまことならば、いじらしいところがあります。兄のため、家のためを思うて、女の一心でこれまで説きに来たものとあれば、その心根に対しても、武士道の情けとやらで、花を持たして帰すべきはずの竜之助の立場でありましょう。ところが、蒼白い面がいよいよ蒼白く見えるばかりで、

「お浜どのとやら、そなた様を文之丞殿お妹御と知るは今日が初めながら、兄を思い家を思う御心底、感じ入りました。されど、武道の試合はまた格別」

格別! と言い切って、口をまた固く結んだその余音が何物を以ても動かせない強さに響きましたので、いまさらに女は狼狽して、

「左様ならば、あの、お聞入れは……」

声もはずむのを、竜之助は物の数ともせぬらしく、

「剣を取って向う時は、親もなく子もなく、弟子も師匠もない、入魂の友達とても、試合とあれば不倶戴天の敵と心得て立合う、それがこの竜之助の武道の覚悟でござる」

竜之助はこういう一刻なことを平気で言ってのける、これは今日に限ったことではない、常々この覚悟で稽古もし試合もしているのですから、竜之助にとっては、あたりまえの言葉をあたりまえに言い出したに過ぎないが、女は戦慄するほどに怖れたので、