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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

「おお悪い駕籠屋に……わしもそれを心配していた……これはまあ、いずれのお方様やら、御親切に」

若い男は竜之助の方に向き直り、倉卒の場合ながら折屈みも至って丁寧であります。

この若い男の語るところによれば、男は京都の者で女は亀山、二人は親戚の間柄で、一緒に伊勢参宮をするとて、この宿で待ち合わせる約束であったとのこと。

竜之助は、二人がこもごも申し述べるお礼の言葉を聞き流して、

「おのおの方は早くここをお引取りなさい、また悪者が立帰ると事が面倒じゃ」

「左様ならば」

男は女を促して、竜之助には改めて慇懃にお辞儀をして、手を取り合わぬばかりに欣々として立ち行く二人の後ろ影を、机竜之助は暫らく見送るともなく見送っておりました。

「おお、要らざることに暇取った、老爺、茶代を置く」

十六

坂の下へ着いた時分には、坂も曇れば鈴鹿も曇る、はたしてポツリポツリと涙雨です。

この雨が峠へかかれば雪になる。雨になり雪にならずとも夜になるにはきまっている。鬼の棲むちょう鈴鹿の山を、ことさらに夜になって越えなくとも、坂の下には大竹小竹といって、間口十八間、奥行これに叶う名代の旅籠屋もあるのだから、竜之助一人を泊めて狭しとするでもなかろうに、他目もふらず、とうとう坂の下の宿を通り越してしまいました。