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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

天地返しとは、天井へ足をつけて、頭を地上にぶらさげて歩く、壁を直角にかけ上る気合で天井を一歩きして来るものであろう。

七兵衛は子供の頃から、屋の棟を歩くのが好きであった。自分の家の屋の棟を歩き終ると、隣りの屋根へ飛び移って、それからそれと宿の土を踏まずに歩いていた。長い竿で追いかけられる、その竿をくぐり抜けて、木の枝に飛びつき、塀の峰を走る。八方から竿でつきかけて、ついに足を払い得たものもなかったそうです。

月の宵、星の夜、真暗な闇の晩、飄々として七兵衛が、この屋の棟遊びをやらかすことがある。秩父颪の烈しい晩など、サーッと軒を払って散る淅瀝の声が止むと、乾き切った杉の皮がサラサラと鳴る。ト、ト、トと、なずなを刻むような音を屋根裏で聞くと、老人は眉をひそめて、

「七公、また悪戯をはじめやがったな」

七兵衛は、地上の物をとることが上手なように、水の中の物をもよく探ることができた。

七兵衛が、多摩川の岸の岩の上に立って、水の中を見ながら、それそこには鮎がいる、山魚がいる、かじかがいる、はやがいる、おこぜがいる、ぎんぎょがいる。それそっちへ行った、それこっちへ来たと独言を言っている。