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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁
お松は、急になんだか身の毛が立つように覚えた。というのは、さいぜん芹沢につかまってからの怖ろしさと、黙って酒を飲んでいるこの怪しい武士の前にいる怖ろしさとは、怖ろしさが違う。
「この人は幽霊ではあるまいか」
とさえ思われたくらいで、席が静かになるにつれて行燈が薄暗くなる、その影で吐息をつきながら、一口飲んでは置き、唇まで持って行っては止め、首を垂れてみては、また屹と刎ね返し、座の一隅に向って眼を据えるかと思えば、トロリとしてお松の面を見る。
その怖ろしさは、総身に水をかけられるようで、ゾクゾクしてたまらないくらいです。
「そ、そこへ来たのは誰だ」
竜之助は、お松の坐っている後ろの方へ眼をつけて突然こう言い出した。
「え、誰も……どなたも来ておいではございませぬ」
お松は、身を捻じむけて、後ろを顧みながら答える。
「そうか、それでよい」
竜之助はぐったりと首を垂れて、
「うーむ」
という吐息。
「あれ、幽霊が――」
お松は何に驚いたか――
「ナニ、幽霊?」
竜之助は勃然と、垂れた首を上げる。
「ああ、怖かった、今ここへ――」
「ナニ、今ここへ何が来た」
「女の姿が――」