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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

亭主は襷をはずして、どこへか行こうとする。

「待て、主人、どこへ行く」

竜之助は呼び止めると、

「このごろは諸国の浪人や無頼漢が入り込んで、商売人泣かせを働いて困るじゃ、見せしめのため、お代官へ行き申す」

「待ってくれ」

竜之助はこの時、腰に差していた刀を鞘のまま抜き取って、亭主の前に置き、

「では此刀を取ってくれ」

「この刀を?」

「うむ、僅か三十文の銭のために縄目の恥にかかるのはいやじゃ、この一腰を抵当にとってくれ」

「へえ、左様でございますか」

三十文の抵当に刀一本。たとえどんな鈍刀にしろ引合わぬということはない。亭主の機嫌が少し直り、

「どうも、町人には不似合いなものでございますが、では、一時それをお預かり申しておきましょう」

竜之助は、その刀をそこに置いて、財布も小銭も置き放し、笠一つを持って、ふいとこの店を出てしまいます。

「いやどうも、このごろは悪い奴が近辺へ入り込むので。なに、わずか三十文のところを手厳しく言うでもないが、いくら饅頭屋だからというて、甘くばかり見せておられぬわい」

この店を出た机竜之助、田原本の街道を取って北へと歩いて行く。竜之助が最初の目的ならば、東をめざすが順であろうに。