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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

お浜の身は寛く、そして強くだんだんに竜之助の身を圧して来ます。

御祈祷鳥がまたホーホーと鳴く。

「不如帰ではないかしら」

お浜はわざと身を横にして杉の木立を仰ぎます。

「竜之助様、なんとかおっしゃって下さい」

竜之助はまだなんとも言いません。

「あなたは刀にお強いように、女にもお強いか」

お浜の髪の毛が竜之助の首のあたりにほつれる。竜之助は無言。

夜はいよいよ静かで七代の滝の音のみ爽かに響き渡ります。

霧の御坂でまたしても人の声。

「ああ人が来ます、敵が来ます」

竜之助は勇躍する。

「逃げましょう、逃げましょう、死ぬのはいやいや、逃げて二人は生きましょう」

お浜は身を以て竜之助にすがりつく。

雲と霧とが濛々として全山をこめた時、剣鳴りがする。二人の姿はそこから消えてしまいました。

十六

本郷元町に土蔵構えのかなりな呉服屋があって、番頭小僧とも十人ほどの頭が見え、「山岡屋」と染め抜いた暖簾の前では小僧がしきりに打水をやっていると、

「御免下さいまし」

入って来たのは百姓体の男で、小さい包を抱え、十一二になる小娘を連れていましたのは、あれから一カ月ばかり後のことでしたが、二人とも見たようなと思わるるも道理、男は武州青梅の裏宿の七兵衛で、娘は巡礼の子お松でありました。