輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

兵馬は少女を見上げて、何となくはっと心を打たれました。女も兵馬の姿から、しばらく眼を放しませんでしたが、そのうちに戸はピタリと立て切って、兵馬はそれなりまた雨の降る勢いを見て立ちつくしています。

わずかの小門の廂だけに身を寄せたのですから、好いあんばいに風は少し向うへ吹いて行く分のこと、袴の裾や衣服の袂には沫がしとしととかかります。と、くぐり戸ががらりとあいて、半身と傘の首だけを兵馬の前に突き出したのは以前の婆さんで、

「もし、あなた様、中へ入ってお休みなさいませ」

「はい、有難う存じまする」

「おっつけ晴れましょうから、どうぞ御遠慮なくお入りなさいませ」

「はい……」

兵馬は遠慮して、まだ入り兼ねていると、

「さあ濡れます濡れます、あなた様も濡れます、この婆も濡れますほどに」

こういわれて兵馬は、好意を有難く思ってこの家の中へ入りました。

「さあどうぞ、お上りあそばして」

兵馬が中へ一足入れると、障子のところに立っていたのはいま二階からちらと見合った少女、見れば髪も容も眼の醒めるような御守殿風に作っておりました。

雨はなかなか歇みそうもなく、風も少しずつ加わってくるようです。