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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

こうして、坐っているところへ、大火のほのおの光線が反射して来ました。夕暮の空に金色の征矢のさすように、二人は、その火光を前面に浴びました。光を浴びたところの半面はえびのように赤いけれども、その後ろは鯰の如く真黒であります。

弁信は、もはやしゃべりません。しゃべらないで、両膝を二つの手で抱えて、首をその中へうなだれています。火の方には向いていますけれども、最初から火を見ているのでないことは勿論です。お銀様は最初から火を見ているのです。立っている時もそうでした。話をしている時もそうでした。坐り込んでから後も、やはり火の消長を、ちっとも放すことなく注視しておりました……この時分に至って、その火を睨んでいるお銀様の眼から、ハラハラと涙のほとばしるのを認めました。

弁信は少しも昂奮してはおりません。膝を抱いて、うれわしげにうつむいてはいるが、決して泣いているのではありません。

峠を過ぎれば、どうしても下り坂です。いかに大家でも、棟が落ちた以上は、下火になるばかりであります。おそらく朝になっても、余燼の勢いは変るまいが、火の勢いとしては、目立たぬほどずつ衰勢に赴くのは争われません。