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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
おお、おお、鶏が啼いている、何番鶏か知らん。
はやりきった馬はまだ血気が下りきるまいが、鶏は平和だ。いかに業火のちまたでも、修羅の戦場でも、その間から鶏が聞え出せば占めたものだ。鶏の声は、暁と、平和のほかには響かない。
しかるにこの二人はまだ、歩き出そうということを言いません。立ち上ろうとする気色も見えません。お銀様がそれを言わなければ、弁信がそれを促さなければならないはずなのに。弁信が立てば、お銀様もいやとは言うまいに。二人とも、どちらが、どうということがありません。弁信は相変らずうつむいて、膝を抱いた上へ自分の首を埋めるばかりにうなだれ、お銀様は穴のあくほどに火の色を見つめているが、最初のあの瞬間にほとばしり出した涙も、今になっては、すっかり乾いてしまって、冷笑気分が豊かです。ただ夕陽のような火の色だけが、二人の坐像を、紅と黒とにかっきりと描き出していることは、以前と少しも変りません。
しかし、本来ここに作りつけてあったわけではなく、尻から根が生えたわけでもありませんから、早晩は動き出さなければならぬ運命にあるものです。
どちらが先ということなく身を起すと、二人の影法師が原っぱの上に、火災の余光を浴びて、影を引いて動き出しました。