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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

そこに何やらの虫が羽ばたきをしている。その虫の音ではない、別に廊下でミシリという音がしたから――

「誰じゃ」

手にしかけた筆の軸を置いて咎めた夫人の声に、凜とした響きがある。

同時に、ちらと長押の上を見やったところには、薙刀がある。

「誰じゃ、それへ見えたのは」

圧えて、しごくような咎めに遭って、のっぴきならぬ手答えがあった。

「え、深夜のところをお邪魔を致しまして、まことに相済みませんことでございます」

いやに、しらちゃけた返事が、何ともいえないいやなすさまじさを与える。

「え、誰じゃ、何しに来ました」

さすがの夫人も、最初の凜とした声の冴えを失って、一時は、度を失った狼狽ぶりも見えたようです。

「御免下さいまし、御免下さいまし」

「おお、そちは曲者な、ちょっともその障子をあけることはなりませぬぞ」

「はい」

「無礼をすると許しませぬぞ、何ぞ用事があらば、それにて申してごらん」

「え、え、別に用事といって上った次第ではございませんが……またこの通り丁寧に御挨拶を申し上げてるんでございますから、決して御無礼なんぞを致すつもりもございません」

「深夜人の住居をおかす、それが無礼でなくて何であります」