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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
山はあれども無きが如し――という一句に至っては道庵式の形容で、ちょっと凡慮に能わない。
「どうだ、友様」
と言って後ろを顧りみたところに、影の形に於けるが如く宇治山田の米友が控えていたのだ。
天下の英雄は、道庵ひとりではなかった。
「うむ、すてきだな」
「全く、すてきだろう」
米友も同じように、眼を円くして、その雄大なる中原の形勢と、道庵のいわゆる、有れども無きが如くなる遠山をながめている。
「この通り、英雄起るところ山河よしといってな、こういうところから英雄というやつが出るのだから、よく見ておきな。それ、このあいだ、見た信州の松本の深志の城というのがあるだろう、あれからながめたところの風景と、これとは同じ城でも大きに趣が違うだろう。あの城に上って見ると、周囲は皆ことごとく高山峻峰だ、山ばかり屏風のように立てこんでいたろう。それがここへ来ると、どうだ、気象とみに開けて気宇闊大なりだろう、規模が違うだろう。つまり、武田信玄と、豊臣秀吉の相違さ。なにも山国から英雄が起らねえときまったわけのものではねえが、山国には山国らしい英雄が起り、平野には平野らしい英雄が起るのだ。