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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
とお祓いの翌日のことでありました。
八
その日の夕方、清澄の茂太郎は、般若の面をかかえて、房総第一の高山を、すでに八合目あたりまで上って来ました。
その辺まではわきめもふらずに上って来たが、ここで歩みをゆるやかにしたものですから、呼吸もやや平調になったのでしょう。ブレスが正しくなったために、歌をうたいたくなったのだか、何か歌いたくなったものだから、それでブレスの加減をする気になったのか……
とにかく、茂太郎の足がゆるやかになると共に、
一つとや――
人も通らぬ山道を
誰かさんと
誰かさんが……
せっかくのことに、勢いこんで歌い出したのに、急に息がつまったもののように途切れて、
「弁信さん、だまっといでよ」
弁信は、なにかにつけて茂太郎の即興歌に、干渉したものです。
それは茂太郎の出まかせの即興が、たとえ純然たる無邪気を以て発せらるるにせよ、内容を無視した形式だけの肉声で、その歌詞が往々飛んでもないところへ外れるのを、当人自身が悟らないのだから、弁信法師が傍についている限り、それを訂正しないでは已みません。
「鄭声の雅楽を乱すを悪む」――とかなんとかいって干渉するものですから、せっかくの興を折られた茂太郎の不平を買うことが一再ではありませんが、それでも素直に弁信の忠告に従って歌い直すのを常とします。