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だいぼさつとうげ

大菩薩峠2

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠2(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,601 字 · 387 頁

青空文庫

「お玉が帰るじゃないか」

「お玉が帰るよ」

「ひとりで帰るねえ」

「ムクがいないや、ムクを連れないでお玉が帰る」

「送ってやろうか」

「危ない」

「でも一人で拝田村まで帰すのはかわいそうだ」

「ムク犬の代りをつとめるかな、犬の代りに狼、送り狼」

地廻りの連中がこんなことを言い囃すものですから、お玉もいくらか気味が悪い、それでムクのいないことが、いよいよ物淋しくなって、足の運びは駈けるようになって行きますと、ちょうど町の外れへ来た時分に、ふいに飛び出して、お玉の裾へまつわりついたものがあります。

「まあ、ムクかえ、どこにいたの、どこを歩いていたの」

お玉は嬉しくてたまらない、腰を屈めてムクの背中を擦ってやろうとすると、ムクがその口に何か物を啣えていることを知りました。

「何だえ、お前、何か啣えているね」

頭を撫でながら、ムクの啣えているものを取りはずして見ると、それは思いがけなく一組の印籠でありました。

「おや、結構な印籠が……」

お玉はそれを、町の方へ向けてなるべく明るいようにして、仔細に見ると、梨子地に住吉の浜を蒔絵にした四重の印籠に、翁を出した象牙の根付でありましたから、