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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

先生がムキになって何かを抛り出して大切の物を創にするのは、今に始まったことではありませんでした。

この夜中に屋根の上へ登った道庵先生は、それでも辷り落ちもしないで、やがて屋の棟の上へスックと立ちました。

ここから見上げると、鰡八大尽の大厦高楼は眼の前に聳えているのであります。道庵先生はそれを睨みつけながら、

「鰡八、鰡八」

と突拍子もなく大きな声で怒鳴りました。近所の人はその声に夢を破られたのもあったけれど、すぐにまた例の道庵先生かと思って、わざわざ起きて様子を見届けようとするものもありませんでした。けれども当の鰡八大尽の家では、その大きな声で驚かされないわけにはゆきませんでした。殊に時めく大尽に向って、鰡八、鰡八、と言って横柄に頭から呼びかけるような人は、滅多にないはずなのであります。

ちょうどその高楼の二階の一間で、急病に苦しんでいた鰡八大尽は、いま少しばかりその苦しみが退いたので、附添のものもホッと息をついているところへ、外の闇の中から、いずこともなくこの突拍子もない大音で、

「鰡八、鰡八」

と呼びかけたのが耳に入りました。

「あれは誰だ」

と、それが大尽の耳ざわりになったのは、道庵先生にとっては誂向きであったけれど、並んでいた人たちにとっては、身体を固くするほどの恐縮なのであります。