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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁
それは昔のことで、この時分は例の尊王攘夷の時であります。西の方から吹き荒れて来る風が強く、東の方の都では、今や屋台骨を吹き折られそうに気を揉んでいる世の中でありましたけれど、清澄の山の空気は清く澄んでおりました。九月十三日のお祭りには、房総二州を東西に分けて、我と思わんものの素人相撲があって、山上は人で埋まりましたけれど、それは三日前に済んで、あとかたづけも大方終ってみると、ひときわひっそりしたものであります。
周囲四丈八尺ある門前の巨杉の下には、お祭りの名残りの塵芥や落葉が堆く掻き集められて、誰が火をつけたか、火焔は揚らずに、浅黄色した煙のみが濛々として、杉の梢の間に立ち迷うて西へ流れています。その煙が夕靄と溶け合って峰や谷をうずめ終る頃に、千光山金剛法院の暮の鐘が鳴りました。
明徳三年の銘あるこの鐘、たしか方広寺の鐘銘より以前に「国家安康」の文字が刻んであったはずの鐘、それが物静かに鳴り出しました。その鐘の声の中から生れて来たもののように、一人の若い僧侶が、山門の石段を踏んでトボトボと歩き出しました。
身の丈に二尺も余るほどの金剛杖を右の手について、左の手にさげた青銅の釣燈籠が半ば法衣の袖に隠れて、その裏から洩れる白い光が、白蓮の花びらを散らしながら歩いているようです。