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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

その子供は声を嗄らして泣いていました。泣いていることが生命が無事であったことを証拠立てるのだから、その母親らしい女は駈け寄って、米友の手から奪うようにその子を抱き上げ、

「三公、まあお前、よく助かってくれたねえ、よく助かってくれたねえ」

ほんとに仕合せなことには、頬のところへ少しばかりきずが出来たばかりで、上手に落ちていましたから、多少、水は呑んでいたようだけれど、見るからに生命の無事は保証されるのであります。

「この井戸へ落ちて、よくまあ助かったねえ、ほんとに水天宮様の御利益だろう」

附近の親たちはその無事であったことを賀するやら、自分の子供たちが危ないところで遊ぶのを叱るやら、井戸側はまるで鼎のわくような騒ぎになってしまいました。

「ほんとにこれこそ水天宮様の御利益だ」

いい面の皮なのは米友であります。米友の背が低いから子供に見誤ったものか、或いはこの驚きに紛れて逆上てしまったものか、誰ひとり米友にお礼を言うことに気がつきませんでした。そうしてやたらに水天宮様ばかりを讃めているのであります。

母親は米友の手から子供を奪って自分の家へ持って帰りました。