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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁
「助けて!」
という悲鳴が起ると、
「おーい」
と答える声はあるけれど、どこで助けを呼んでどこで答えるのだか更にわかりません。
避難すべき人は宵のうちから避難し尽したはずであるのに、なお逃げおくれた者があると見えて、彼処の屋根の上や此処の木の枝で、悲鳴の声が連続して起ります。多くの家や小屋が、みるみる動き出して徐ろに流れて行きます。
そのなかの一つの屋根の羽目がこのとき中から押破られて、そこに姿を現わしたのは、いったん水に呑まれた机竜之助でありました。破風を押破った竜之助は、屋根の上へのたり出でたもののようです。それでも刀と脇差だけは、下げ緒で帯へしかと結んでいたものらしくあります。屋根へ出ると菖蒲の生えていた棟へとりつきました。そこでホッと息をついて、自分の面を撫でてみました。頬のあたりから血が流れている、何かのはずみに怪我をしたものらしい。手足も身体中もしきりに痛むけれども、今どこにドレだけの怪我したものかわからないのであります。
とにもかくにも屋根の棟へとりついた竜之助は、そこでホッと息をついて面を撫でてみたが、その創の大したものでないことを知り、水に浸ったわが身を身ぶるいしたのみであります。