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てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《天主閣の音(てんしゅかくのおと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,941 字 · 79 頁

青空文庫

「殿、旨く参りました」

小間物屋喜助と宣って来た、三十がらみの若者が云った。「例の香具師を利用して、阿片をお城へ持たせてやりました」

「うむ然うか、それは可かった」殿と呼ばれる四十がらみの男は、微妙な薄笑いを浮かべたが、

「さて其例の香具師だが、雲切仁左衛門に相違無いかな?」

「どうやらそんなように思われます」

「で天主閣の唸き声は?」

「あれは滑稽でございました。大凧だったのでございます」

「そんな事だろうと思っていたよ」殿と呼ばれる四十男は、復も微妙に薄笑いをした。

「おそらく其凧で空へ上り、鯱鉾を盗ろうとしたのだろう」

「そんなようでございます。轆轤仕掛の大凧で、随分精巧に出来て居ました」

「香具師も香具師だが尾張様には、随分乱行をなさるようだな」

「お半の方という側室を愛され、他愛が無いようでございます」

「うむ、他からもそんな事を聞いた」

「さて其側室のお半の方、容易ならぬ悪事を企んで居ります」

「ほほう然うか、どんな悪事だな?」

「はい殺人でございます」

「で、誰を殺そうとするのか?」

「はい、まだ、そこ迄は探って居りません」

「ああ然うか、それは残念、ひとつ其奴を探ってくれ」