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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《天保の飛行術(てんぽうのひこうじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,024 字 · 28 頁
前書き――百年前の飛行機
前書き――百年前の飛行機
百年前、日本には既に空飛ぶ機械が発明されて居たのでした。惜しいことにそれが後年の飛行機にまで発達する機会に恵まれず、無智と野心と邪悪な心とに亡ぼされて、たった一篇の随筆と、哀れ深い物語を遺しただけで亡びてしまったのです。併し、その先覚者の逞ましい意図と、血みどろの研究が、今日世界の空を征服せんとする、航空界の驚異的な発達の一つのささやかな捨石でなかったと誰が保証するものでしょう。
安政四年出版した碩学菅茶山の随筆「筆のすさび」に左の小さい物語が採録されて居ります。
一、機巧、備前国岡山表具師幸吉というもの、一鳩をとらえて其身の軽重羽翼の長短を計り、我身の重さをかけ比べて自ら羽翼を製し、機を設けて胸前にて操り搏飛行す、地よりることあたわず、屋上より羽搏ちて出ず。ある夜郊外をかけり廻りて、一所野宴するを下し視て、もし知れる人にやと近よりて見んとするに、地に近づけば風力弱くなりて思わず落たりければ、その男女おどろきさけびて遁はしりける、あとには酒肴さわに残りおれるを幸吉あくまで飲くいして(中略)――後にこの事あらわれ市尹の庁によび出され、人のせぬ事をするはなぐさみといえども、一つの罪なりとて両翼をとりあげ、その住る巷を追放せられて、他の巷にうつしかえられる。