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てんぐいわのさつじんま

天狗岩の殺人魔

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《天狗岩の殺人魔(てんぐいわのさつじんま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 頁

青空文庫

何思ったか駿馬に一むち

ふといま会った厭な男が気になり始めた。学校友達だと云うが年齢が違うし、あの君子のような京太郎と付合う人品ではない、殊に依ると京太郎に取って悪い奴かも知れぬ。――元来祐吉は京太郎が嫌いであった。然し人一倍義侠心の強い彼は、若し京太郎にとって悪い奴なら、自分がなんとか扱ってやろうと考え、そのまま浜の方へ馳けだした。

蔦屋という宿は乗合自動車の停留場の前にある。祐吉はその店へとび込んだ。

何思ったか駿馬に一むち

「ああその方ならお泊りです」

番頭は直ぐ宿帳を調べて呉れた。

「何をする人ですか」

「宿帳には金融業と書いてございますが」

「金融業……金貸だね」

有難うと云って祐吉は外へ出た。

金貸し、金貸し――あの温和しい、聖人のような京太郎が金貸等と関係している。否、そんな事はない。それなら却って見直すが、恐らく友達の借金の保証でもしたのだろう、そんな事に違いない。

「あんな奴は、友達の借金でも背負わされて、少し実社会の味を覚える方が宜いんだ。そうすれば少しは人間らしくなるだろう。――今頃『万有還金』なんて夢みたいな事を研究するのも、つまりは世間知らずの馬鹿なところさ」