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たじゅうとそのいぬ
太十と其犬
長塚 節
線上閱讀長塚 節《太十と其犬(たじゅうとそのいぬ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,769 字 · 32 頁
二
彼も他人のするように手拭かぶって跟いて行った。帰る時にはぽさぽさとして独であった。若い衆はみんな自分の女を見つけると彼を棄ててそこらの藪や林へこそこそと隠れて畢う。太十はどの女にも嫌われた。丁度水に弾かれる油のようであった。それでも彼は昼間は威勢よく馬を曳いて出た。彼は紺の腹掛に紺の長いツツポ襦袢を着て三尺帯を前で結んで居た。襦袢の襟を態と開いて腹掛の丼を現わして居た。彼は六十越しても大抵は其時の馬方姿である。従来酒は嫌な上に女の情というものを味う機会がなかったので彼は唯働くより外に道楽のない壮夫であった。其勤勉に報うる幸運が彼を導いて今の家に送った。彼は養子に望まれたのである。其家は代々の稼ぎ手で家も屋敷も自分のもので田畑も自分で作るだけはあった。手堅にすれば楽な身上であった。夫婦は老いて子がなかった。彼はそこへ行ってから間もなく娵をとった。其家の財産は太十の縁談を容易に成就させたのであった。
二
太十が四十二の秋である。彼は遠い村の姻戚へ「マチ呼バレ」といって招かれて行った。二日目の日が暮れてから帰って来た。隣村の茶店まで来た時そこには大勢が立ち塞って居るのを見た。