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にょうにんきんせい

女人禁制

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《女人禁制(にょうにんきんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,705 字 · 6 頁

青空文庫

戸を閉めた商店の間々に、まだ戸の開いてるのはしいんと静まり返り、歩道の夜店はしまいかけている。なお人通りはあるが、どの顔も佗しげで、兇悪の相さえ帯びている。享楽の滓が幽鬼となって、そこいらの物影にひそんででもいるのだろうか。

そういうところを歩くのは、殊に微酔をおびて歩くのは、悪くはない。私は好きだ。けれど彼女は、どうしたのか、へんに慴えてるようだ。慴えてるだけならよいが、なんだか寒そうで、貧相で、見すぼらしい。その敏活な清い眼は、もう凍りついて動かない。そのふくよかな色艶は、もう皮膚の下に沈みこんでいる。そのやさしい香りは、もう消え失せてしまっている。そして肩をすぼめ、身体を硬ばらして、とっとっと足早に歩く。時々、急に寄りそってくるし、またつと離れる。勿論口など利かない。そうなってくると、何のために歩いてるのか分らなくなる。一体銀座通りは、目当てなしに急いでつき切るべき処ではなく、ぶらりぶらりと歩くべき処だ。コーヒーの香りかビールの泡に身を任せておくべき処だ。それを彼女は、木で出来た人形のようにぎごちなく、而も足早に歩いていく。私もしたがって足を早める。