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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

「ばか云わないでよ京さん」とかなえは打つまねをした、「事業が大きければ大きいほど、遊ばせておく現金なんてないもんなのよ、あたしだってちょっとした買い物はみんな小切手ですもの、あんたたちの考えるようなものじゃないのよ」

「でもねえ」とおたねが云った、「この子も中学ぐらいやらなければ」

「ア・ラ・パレ、だめよ」かなえは姉に半分も云わせずに手を振った、「あんな踏んづぶしたがんもどきみたいな子、中学へやるなんて勿体ないわ、小学校だけでおんの字、もうその話はよしてちょうだい」

そして京太に杯をさした。

社交界とかホステスとかいう言葉のもつ概念と、かなえの口ぶり飲み食いする態度とは、まるで関連性のないものにみえた。彼女はさされる酒を呷るように喉へ流し込み、肴の皿へ片っぱしから箸をつけた。焼き魚は骨までしゃぶったし、歯にはさまった小骨は、口へ指を突っ込んでほじり出し、ちゃぶ台の上へこすりつけ、その指を平気でぺろっと舐めた。そして酔いがまわりだすと風流譚を始め、いきなり京太の肩を突きとばしたり、大きな口をいっぱいあけてけらけら笑ったりした。

このあいだずっと、おたねとかつ子は内職仕事をしていたが、京太もかなえも二人が眼にはいらないかのように、自分たちだけで飲み食いし、云いたい放題のことを云い、ばか笑いをしていた。