輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁

青空文庫

老人はそんなけぶりもみせなかったが、段のほうで気づいたのだろう、やがてその訪問は少しずつ遠のき、そしてどこかへ移転していった。

段が引越していってまもなくたんば老の家へ泥棒がはいった。老人の家もまた戸閉りがない、雨戸は閉めるが鍵は掛けないから、どんな駆け出しでも楽に忍び込める。泥棒は家の中がさっぱりと片づいているのに、吃驚したことであろう。抽出し付きの箱を見て、金箱と誤認したものか、それを抱えて逃げだそうとした。老人は眼をさまして、泥棒のすることを眺めていたものか、そのとき初めて声をかけた。

「きみ、それは違うよ」老人は低い声でやわらかに囁きかけた、「それは仕事の道具箱だ、金はこっちにあるよ」

泥棒は足を停めて振返った。たんば老の低い声と、やわらかな口ぶりが彼をひきとめたようで、それでもまだ逃げ腰のまま、「なんだと」と凄んでみせた。

「いま出してやるよ、たくさんはないがね」たんば老はやはり囁き声で云って、静かに起きあがり、とだなをあけて財布を取り出した。古くなって擦り切れた革の財布であったが、老人はそれを持ってゆき、そのまま泥棒に渡した。

「いまはこれで全部だがね」