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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
「うちの息子がどうしたんですって」と母がとびだして来た。
「まあおちついて下さい」警官は片手で、なだめるような手まねをした、「本通り一丁目の交番から電話連絡があったんで、ぼくには詳しいことはわからないんだが、なんでも小型乗用車にはねられて」
「場所はとこです、けがは重いんですか軽いんですか」
「おっかさん」と辰弥が制止した、「静かにしなきゃだめだよ」
「とにかく電話連絡なんでね」と警官はひたすらメモをみつめながら云った、「場所はまあ交番に近いところだろうと思うが、けがの程度までは連絡では云っていなかった、中橋のそばにある仁善病院というのへ入院させて」
「病院へ、入院ですって」
「おっかさんったら」と辰弥はまた母を制止して、警官にきいた、「中橋の仁善病院ていうんですね」
「そういう電話連絡なんだ」
警官は初めてメモから眼をあげた。そして、このみじめな住居にすばやく視線をはしらせて、誰かすぐにゆけるかどうか、とあやぶむようにきいた。
「はい、すぐにゆきます」と辰弥が答えた、「どうもお手数をかけました、ご苦労さまです」
警官は挙手の礼をして去った。母は泣きだし、驚きのあまり立っていられないように、そこへ坐っておろおろと、長男の名を呼んだり、また泣きいったりした。