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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

そうして夜は皆で集まって読んだものの話しくらをするのであった。明治二十年代の田舎の冬の夜はかくしてグリムやアンデルセンでにぎやかにふけて行ったのである。「しり取り」や「化け物カルタ」や「ヤマチチの話」の中に、こういう異国の珍しく美しい物語が次第に入り込んで雑居して行った径路は文化史的の興味があるであろう。今書店の店頭に立っておびただしい少年少女の雑誌を見渡し、あのなまなましい色刷りの表紙をながめる時に今の少年少女をうらやましく思うよりもかえってより多くかわいそうに思うことがある。

生まれて初めて自分が教わったと思われる書物は、昔の小学読本であって、その最初の文句が「神は天地の主宰にして人は万物の霊なり」というのであった。たぶん、外国の読本の直訳に相違ないのであるが、今考えてみるとその時代としては恐ろしい危険思想を包有した文句であった。先生が一句ずつ読んで聞かせると、生徒はすぐ声をそろえてそれを繰り返したものであるが、意味などはどうでもよかったようである。その読本にあったことで今でも覚えているのは、あひるの卵をかえした牝鶏が、その養い子のひよっこの「水におぼれんことを恐れて」