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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
鳴き立てる話と、他郷に流寓して故郷に帰って見ると家がすっかり焼けて灰ばかりになっていた話ぐらいなものである。そうしてこの牝鶏と帰郷者との二つの悪夢はその後何十年の自分の生活に付きまとって、今でも自分を脅かすのである。そのころ福沢翁の著わした「世界国づくし」という和装木版刷りの書物があった。全体が七五調の歌謡体になっているので暗記しやすかった。そのさし絵の木版画に現われた西洋風景はおそらく自分の幼い頭にエキゾチズムの最初の種子を植え付けたものであったらしい。テヘラン、イスパハンといったようないわゆる近東の天地がその時分から自分の好奇心をそそった、その惰性が今日まで消えないで残っているのは恐ろしいものである。「団々珍聞」という「ポンチ」のまねをしたもののあったのもそのころである。月給鳥という鳥の漫画には「この鳥はモネーモネーと鳴く」としたのがあったのを覚えている。官権党対自由党の時代であったのである。今のブル対プロに当たるであろう。歴史は繰り返すのである。
「諸学須知」「物理階梯」などが科学への最初の興味を注入してくれた。「地理初歩」という薄っぺらな本を夜学で教わった。