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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁

青空文庫

少年時代の亮について覚えている事はきわめてわずかである。舌のさきを奥歯にやって、それをかみながら一種の音を立てる癖があった事を思い出す。これが父の楊枝をかむ癖と何か関係があったかどうかはわからない。それから何かのおりに、竹の切れはしで、木瓜の木をやたらにたたきながら、同じ言葉を繰り返し繰り返しどなっていた姿を思い出す。その時の妙に仙骨を帯びた顔をありあり見るように思うが、これはあるいは私の錯覚であるかもしれない。またある時はのらねこを退治するのだと言って、槍かあるいは槍といっしょに長押にかかっていた袖がらみのようなものかを持ち出して意気込んでいたが、ねこの鳴き声を聞くと同時にそれを投げ出して座敷にかけ上がったというような逸話もあった。

三人の兄弟のだれと思い比べてみても、どこか世間をはなれたような飄逸なところのある点でいちばん父の春田居士の風貌を伝えていたのではないかと私には思われる。

幻燈というものがまだ珍しいものであったころ、亮がガラス板にかいた絵を、そのまま紙の小さなスクリーンに映写し、友だちを集めて幻燈会をやった事もあった。つまらないような事ではあるが、そういうふうの一種のオリジナリティもない事はなかった。